盲目の天使

盛大なため息をつき、カルレインは今度こそ降参して、寝台から降りた。


横になったままのリリティスの額に、音をたてて軽く口付ける。


「カルレイン様ぁ?」


さきほどまでの穏やかな声が一変し、とがめる様な、低い声を出すオルメ。


「リリティスがよく眠れるように、まじないをかけただけだ」


開き直ったようにオルメに言い訳してから、リリティスの耳元で、わざと艶っぽく囁いた。


「お休み、リリティス。

今日の続きは、今度またゆっくりと教えてやる。

今夜はお前の夢を見よう。お前も私の夢を見ろよ」


「は、はい・・・。

お休みなさいませ。カルレイン様」


心臓がはちきれんばかりに、早鐘を鳴らす。

やっとそれから開放されるのだと、ほっと息をついたが。


「お前は、俺にまじないをかけてくれないのか?」


リリティスを困らせたい、カルレインの思惑を知らない彼女は、

言葉の意味を咀嚼して、まさにカルレインが望むような顔をしてしまう。


「カルレイン様!」


オルメの声に背中を押され、カルレインの足音が、遠ざかっていくのを聞いて、

リリティスは、少し寂しく思った--。













< 93 / 486 >

この作品をシェア

pagetop