風にキス、君にキス。

花火






…高校二年の夏が来た。



一番の青春だと言ってもおかしくない時期。





「えー只今より」



ごほんと咳払いしてから、雄大先輩が両手を広げて言った。



「藤島学園陸上部夏合宿、開催ーっ!」


「おーっ」



あたし達を乗せたバスは、とびきり古いユースホステルの前に止まった。



ユースホステル。



響きは格好いいけれど、要するに若者向けの民宿のようなもの。



なんでも自分でやる、というまさに合宿向けの宿なのだけれど。



あたしがここを合宿場所に提案したのは、もちろん練習する環境が見事に備わっていたからだった。



…まず、大きな池を取り囲む道は朝のウォーミングアップにぴったりな距離。



ジョギングやマラソンをする人のための走るコースも完全に設けてあって、陸上部合宿にはこれ以上ない程にもってこいの場所だった。


< 179 / 310 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop