偽装婚約~秘密の契約~
険悪のムードの中に漂ってきた良い香り。
「沙羅、瑞季さんの手伝い、しに行かない?」
その芽依の提案に頷き、2人でリビングを出た。
「まったく、男共は困ったもんね」
苦笑いの芽依。
「そうそう。
要とジュウゴは相性が悪いのかもね」
だったらなんで2人をリビングに残してきたのか。
そんなの、簡単な話。
ジュウゴだって、口は悪いけど根はいいヤツだし、
要だって、あんなふうに嫌味を言うこともあるけど、それでも優しいヤツ。
だから2人には仲良くなってほしいんだ。
邪魔者がいたら、
話したいことも話せないかもしれないでしょ?
「瑞季さーん
手伝いますよ~」
キッチンに入るとエプロン姿の瑞季さんが1人で悪銭苦闘。
既に盛りつけられたお皿の中はどれもおいしそう。
『いや、いいですよ。
座って待っていてください』
そんな瑞季さんの言葉におかまいなしと
あたしと芽依はワゴンに出来上がった料理をのせていく。
今ごろ…打ち解けてないかな、あの2人。