偽装婚約~秘密の契約~
『沙羅様を偽装婚約の相手に決めた晴弥様は沙羅様の身辺調査を行いました。
徹底的に。
沙羅様の過去から、現在に至るまでの全てを、です。
そして身辺調査をしていて、ある事実が発覚したのです。』
「ある…事実…?」
頭の回転はひどく遅くなり、
理解するのには到底、時間がかかりそうな話だった。
『洋介さんは…沙羅様の他に彼女がいたのです。
だから…晴弥様は…「ウソよ!」
気づくとあたしは泣きながら叫んでいた。
ウソだ。
ウソだ。
ウソだ…っ!
そんなはず、ない。
洋介が二股かけてたなんて…ウソだ。
『沙羅様、最後まで話を聞いて下さい。
この話は晴弥様に堅く口止めされていました。
だから言えなかったのです。
でも、やっぱり、あなたは知らなくてはいけない。
どうして、晴弥様があなたのために頭を下げたのかを。』
きつく抱きしめられ、また気持ちが醒めていく。
頭の中は相変わらずの大パニックだった。
けど、少しずつ冷静さを取り戻していた。
『二股の事実を知った晴弥様は、私にこう言いました。
沙羅を傷つけずにこの事実を隠す方法はないのかな、と。』