ノンシュガー
なぜだろう。


記憶喪失……何か人生的に非常に危険な状態な気がする。

なのに、何て冷静なんだ、俺は。

何もわからないから冷静なのか?
事の重大ささえ理解できないから、こんなにも客観的に考えられるのだろうか。

まあ、悩んでも仕方ない。きっかけとなる友人を待とう。


その間、千羽さんから事故の話を聞くことにした。


「別にあたしもあなたも問題があったわけじゃないの。一般道でね、飲酒運転の車が後ろからあたし達の車にぶつかってきて、その弾みであたしの父がハンドルを切り損ねて……反対車線に飛び出したわけ」

何と無く話は見えたぞ。

千羽は暗い顔で続ける。

「その一般道は長い直線でね、お互いスピードを出しすぎていたわけじゃなかったけど、そこそこ速かったと思う。正面衝突よ、あなたが乗った車と」

「で、父親はどうなったんだ?」

「姉も補助席に座ってたの……亡くなったわ。父も姉も、二人共ね」

ショックだった。頭の中に雷が落ちたみたいだ。

故意じゃなくても、彼女の両親を奪ったことに対して、謝罪をしなければいけない気がした。


……ん? 謝りに来たのは彼女だぞ?

「じゃあ何で謝りに……」

そう言って改めて千羽を見る――って、何で泣きそうな面してんだよ?
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