Far near―忍愛―
◆
「ねぇ、明日さ。一緒に出掛けない?」
「えっ…」
それは本当にある日突然。
いつものようにソファーに座って後ろから佐和子を抱きしめながらDVDを見ていると、佐和子が思い付いたように呟いた。
俺は願ってもない彼女からのデートの誘いに呼吸が止まりそうなくらい驚いたけど、断る理由などどこにもないので
「いいけど…」
と舞い上がる気持ちを抑えながら出来るだけ平然を装って言った。
「ほんと?やったぁ~!何処いこっかー?遊園地がいい?それとも水族館?」
「ふっ。俺いくつなの」
「えっ。ダメ?じゃあ映画とか?」
「いーよ、佐和子の好きなとこ行こ」
はしゃいでいる姿が可愛くて、俺はいつの間にか父親のような心境で、見守るように微笑んで言った。
これじゃいつもと逆だ。
佐和子はそれを意外だと思っているのか、一度はしゃぐのをやめてポカンと俺を見つめた。
「なに?」
「なんか…幸秀の彼女になる子はきっと幸せになるだろーなって」
「はぁ?」
言葉の意味が全くわかんなくてすっとんきょーな声が出る。
「だって、すっごくすっごく優しいから。きっと凄く大事にするんだろうなぁ」
「……………」
笑顔でそう言われ、俺は佐和子のお腹に回していた手に力を込めた。
「幸?」
…だったら、俺のもんになってよ。
誰にでも優しくしてると思ってんの?
あんただから…
「…んで気づかねんだよ…」
「え…?」
顔を覗きこまれた所で俺はハッとしてようやく冷静に戻れた。
…何を言おうとしてたんだ俺…。
危うく
絶対幸せにするから俺にしとけよ
なんて言いそうになった。
眉間にシワを寄せながら、一生懸命気持ちを押し殺してちらりと佐和子を横目で見ると、彼女はとても不安そうな顔をしていた。
「ねぇ、明日さ。一緒に出掛けない?」
「えっ…」
それは本当にある日突然。
いつものようにソファーに座って後ろから佐和子を抱きしめながらDVDを見ていると、佐和子が思い付いたように呟いた。
俺は願ってもない彼女からのデートの誘いに呼吸が止まりそうなくらい驚いたけど、断る理由などどこにもないので
「いいけど…」
と舞い上がる気持ちを抑えながら出来るだけ平然を装って言った。
「ほんと?やったぁ~!何処いこっかー?遊園地がいい?それとも水族館?」
「ふっ。俺いくつなの」
「えっ。ダメ?じゃあ映画とか?」
「いーよ、佐和子の好きなとこ行こ」
はしゃいでいる姿が可愛くて、俺はいつの間にか父親のような心境で、見守るように微笑んで言った。
これじゃいつもと逆だ。
佐和子はそれを意外だと思っているのか、一度はしゃぐのをやめてポカンと俺を見つめた。
「なに?」
「なんか…幸秀の彼女になる子はきっと幸せになるだろーなって」
「はぁ?」
言葉の意味が全くわかんなくてすっとんきょーな声が出る。
「だって、すっごくすっごく優しいから。きっと凄く大事にするんだろうなぁ」
「……………」
笑顔でそう言われ、俺は佐和子のお腹に回していた手に力を込めた。
「幸?」
…だったら、俺のもんになってよ。
誰にでも優しくしてると思ってんの?
あんただから…
「…んで気づかねんだよ…」
「え…?」
顔を覗きこまれた所で俺はハッとしてようやく冷静に戻れた。
…何を言おうとしてたんだ俺…。
危うく
絶対幸せにするから俺にしとけよ
なんて言いそうになった。
眉間にシワを寄せながら、一生懸命気持ちを押し殺してちらりと佐和子を横目で見ると、彼女はとても不安そうな顔をしていた。