サラリーマン讃歌
相変わらず気の利く、先輩思いの久保が申し訳なさそうな顔をしている横で、その彼女さんは平然とした顔で言ってきた。

「自販機に売ってないから却下」

「何言ってんの。近くにコンビニがあるじゃない」

当たり前の事を言わすなと言わんばかりの勢いで、目を丸くしながら梓が言った。

「そのコンビニでもなかったらどうするんだよ?」

そこまで行くのが若干面倒くさかった俺は、再度梓に食い下がった。

「大丈夫。さっき帰ってくる前に見てきたから」

「じゃ、その時に買えよ」

「買ってしまったら、サクくんに奢ってもらえないじゃん」

梓の方が一枚上手であったので、俺は観念して買いに行くことにした。

「久保は何が良いんだ?」

「じゃ、俺はコーヒーで」

「メーカーは何でもいいよな?」

前の会社の上司で細かく注文してくる奴がいたので、癖になっていた俺は思わず訊いてしまった。

その上司は、メーカーが違うと何度でも買いに走らせるのだ。

「何でもいいっす」

「あ、俺はジョージアのブルーマウンテンやで」

そこに音響・照明担当の岡本が、チラシ配りからちょうど帰って来たようで、話に加わってきた。

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