サラリーマン讃歌
そんな話を聞いしまうと、俺でも淡い期待を抱いてしまうのは仕方のないことだった。

普段あまり感情を表に出さない俺も、顔がニヤけてくるのを抑えることが出来なかった。




「ねえ、次はあれに乗ろうよ」

梓は上機嫌で指差した。あれとは、高さ、落差、そしてトップスピードとも日本で一番と云われている《スチールフェニックス》というジェットコースターだ。

「ちょっと気分が悪いから、お前らだけで行ってこいよ」

彼等のペースにずっと付き合わされて、昼休憩を挟んだとはいえ、四回連続気分が悪くなる様な絶叫マシーンに乗ると、流石に限界を感じ始めた。

「サクくんは親父だもんね」

そう毒づいた梓に苦笑しつつ、近くのベンチに腰掛けた。

「すんません。じゃ、ちょっと行ってきます」

「おう。行ってらっしゃい」

俺を気遣う久保の腕を、梓が引っ張っるように連れていった。その後を空見子がついていく。

名残惜しげに遠ざかる空見子の後ろ姿を見送っていると、何やら梓に告げると、こちらに向かって彼女が歩いてくる。

「私も気分が悪いから休むことにしたの」

近くまで来ると何も聞いていない俺に、言い訳がましく、無表情でそう言うと俺の横に座った。

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