サラリーマン讃歌


「ホントだよ。あんまり興味がないってのもあるけど、中学校から女子だけだったから知り合う機会も少なかったし」

複雑な気分だった。嬉しい反面、男性に興味がないと言われ、軽く振られた気分を味わった。

「でも、結構ナンパされたりするでしょ?」

「確かに多いけど、絶対に相手にしないもん。基本的には無視」

「あれ?じゃ、なんで俺の時は相手にしてくれたの?」

「えっ?……あの時、なんかサクくんが真剣な目をしてたから……かな」

空見子は何か考える様に、少し首を傾げながら答えた。

「真剣な目?」

「そう。凄い真剣な目」

そう言った空見子はその時の光景を思い出したのか、プッと吹き出す様に笑った。

「何笑ってんの?俺、そんなへんな顔してた?」

「そんな事ないよ。でも必死さは伝わってきた」

改めて言われると、もの凄く恥ずかしくなってきた。自分でも判るぐらいに顔の表面温度が上昇してきている。

「悪かったな。おじさんが必死で」

「アハハ、でもなんか可愛かったよ」

「可愛いいって、お前……誉め言葉じゃないぞ、それ」

「誉め言葉だよ。だって好感持てたもん」

今度は空見子が赤面する番だった。

「うわ……何言ってんだろ、私」

< 54 / 202 >

この作品をシェア

pagetop