王様監禁ゲーム。


病院独特の臭いが、鼻を掠める。


あたしを助けた男の方……武井さんは、静かにベッドに寝ていた。

命には別状はないらしいが、ノコギリでやられた左手は神経までやられていて、もう使うことが出来ないかもしれないらしい。



あの場面が頭に浮かび、吐き気と共に涙が溢れる。

あたしのせいで……

関係のない人まで巻き込んでしまった。


「……っ」

不意に、頬に温かい感触が伝わった。

反射的に体が後ずさる。


でもその手が武井さんの手とわかり、安心する。


「泣かないで、下さい」

か細い声で、武井さんは言った。


「でも……あたしのせいでっ……」

「あなたのせいだなんて、思ってません。あなたを助けることが出来て、よかった」


涙が止まらなかった。

男の人を拒絶してもおかしくない体が、なぜか彼にはしなかった。


むしろ、温かい手のぬくもりが、心地いいとさえ思った。



あたしが求めていたのは、これだったんだ。




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