僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ


「俺の美声に酔いしれても知らんでぇ〜? 惚れるなら今のうちや」


駅前にあるカラオケの受付で、メニューを選んでいるあたしに向かってウィンクしてくるバカ1名。


「あはは。……で、ドリンクバーってつきます?」

「なんやその乾いた笑い! もしや凪ってSなん!?」

「ちょっと黙っててよ遊志」

「グッサー! 傷付いた、今のは傷付いたで……」


わざとらしく泣き真似をする遊志に、店員や受付待ちの客は笑いを堪えきれていない。


……恥ずかしいんですけど。


「すいません、もうなんでもいいんであの変な人を早く中に入れてもらっていいですか?」

「えー。俺ドリンクバー付いてへんと嫌やでぇ〜?」

遊志ウザッ!


もはや笑いながら接客をする店員さんに苦笑いを見せ、あたしと遊志はなんとか部屋に入った。


「凪、何飲むーん?」

「ココアがいい」

「はーい! 暫し待ってるんだぞっ」

「早く行けっ!」


額をツンッと突いてきた遊志に笑いながら言うと、遊志も笑いながら部屋を出て行った。


遊志って本当、高3に見えない……喋るとね、喋ると。
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