僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ
「げほっ……う……っ」
俺はただ、トイレから洩れる苦しそうな声を聞いていた。
暗闇に響くそれは、顔をしかめるには充分で、心苦しくなるのにも、充分過ぎるものだった。
―――ガチャ。
暫くするとドアが開く。
一瞬強い光に目が眩み、次の瞬間には有須の驚いた顔。
「……祠……稀」
口元を拭って出てきた有須に無言でタオルを手渡すと、気まずそうに受け取った。だけど、視線を合わせようとはしない。
タオルで口元を抑える有須の右手に視線を移すと、人差し指と中指の第二関節辺りに絆創膏が貼ってあった。