7月7日、逢いたくて

【starting over】



……………



星が消えてゆく。

代わりに、現実を連れて―――。






「ありがとうございました。」

ドームの扉を開け
上映を終えたお客さんに一人一人、頭を下げる。


あたしはこの瞬間が一番好きだ。

お客さんが満足そうに笑顔でドームを出てゆく、この瞬間が。




と、その時。

全ての人が出払ったのを見計らって、おきちゃんがドームから飛び出して来た。



「織葉さぁんっ!」

「あ、おきちゃんお疲れ~。どうだった?」

「どうって、緊張してそれどころじゃないですよぉっ!」

「あはは!でもすごくよかったよ?おきちゃんの初解説!」

「んもぉ!からかうのは止めて下さいっ!」


あはは!と笑うあたしに
おきちゃんは子供みたく、ぶうっと口を尖らせる。



6月は過ぎ
今日から7月に入った。

天気は相変わらずどんよりしていて、太陽はなかなか顔を見せない。


だけど、あたしの心は
肩の荷が下りたような、清々しい気持ちでいっぱいだった。

まるで、春の訪れのように
心はとても穏やかで。


こんな風に笑えるようになったのは、紛れもなく彼方のおかげだ。





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