純愛バトラー
 カウンターにチケットを渡して、料理を盛り付けるためのプレートを受け取ると、片っ端から料理を盛り付けた。

 我ながら盛りすぎな気がするが、深く考えない事にしよう。

 てんこ盛りになったプレートと、もっさりと積み上がったパンの山を持って、オレはテーブルへと向かった。

「陣、遅かったな。朝には強いそなたが珍しい。昨日騒ぎすぎたか? あまり無理はしないことだ」

 絵理はいつもと変わらぬ口調で、さりげなくオレを気遣っている。
 別に青司と付き合ったからといって、オレ達の関係が変わるわけじゃない。
 変わったのは、オレの絵理に対する気持ちをはっきり認識した事だけ。

 些細な変化だが、大きな変化。

 たったこれだけの事で、感情の制御が困難になってしまう。

 オレは絵理に曖昧な返事を返すと、空いている席に腰を下ろした。
 たった一人分の距離しかあいていないのに、絵理が妙に遠くに感じられる。
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