純愛バトラー
 祖父母の顔すら見た事がないオレにとって「家族」と呼べる存在は、この病室で一人眠る母だけだった。


 それなのに。


 つい最近まで、自分の母親から目を逸らそうとするばかりでいた。

 そんなオレを変えたのは、あいつが何気なく言った一言。


『大事なものに想いを馳せるのは、大切な事だと私は思う。たとえそれが、痛みを伴うものであったとしても、な』


 あの日からだ。
 再び、オレがここへ足を運ぶようになったのは。
< 221 / 401 >

この作品をシェア

pagetop