戦国サイダー
『少しは気が楽になったか?』


「楽にも何も、なんか脱力した……ってかそんなこと言うってもしやただのネタ……?」


『そうだと言ってあげたいけれど、残念ながら』



良かった、もしただのネタだったらなら今からでも兄の所に殴り込みに行きそうだった。



息をひとつ吐いて、気を抜ききったら左目から涙が一粒膝の上に落ちてくる。



『俺の気持ちは、以前伝えた通りだから』



泣きだしたのがばれてしまったのか、急に兄の声が柔らかいトーンになる。



『お前が後悔しなければ、どんな結果でもいい。だから』



あの日の夜を思い出す。


この兄は、どこまで私に優しくて。



『必死に、考えなさい』



どこまで私に厳しいのだろう。





その後、兄からは続ける言葉もなく。


ただ泣きじゃくる私の向こうで、ずっと電話を離さないでいてくれた。


 
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