嫌いな男 嫌いな女

「あー……例の幼なじみ? もーいいじゃんそんなのーもうずっと会ってないんでしょ?」

「そういう問題じゃないの!」

「そんなのでいいのー? すっごい出会いを捨てちゃってるかもしれないんだよお?」


そう言われると悩んでしまう自分の弱さ。
ぐっと言葉に詰まりながらも「いいの」と意地を張ってみせる。

呆れ顔のふたりに、強がって見せていると駅に着いた。

このまま明宏くんとデートに行くらしく、駅で待ち合わせの由美子と、逆方向に帰っていく沙知絵と別れてひとり電車に乗り込む。


沙知絵のいうこともわかる。
由美子にだって言われることがある。

いつまで巽を気にしているのかって。

わかってるんだ、気にしすぎっていうことは。あいつにとったらそれこそただの“練習”みたいなもんだってことも。

だけど、ううん、だからこそ。忘れられないんだ。


あいつにとっては、きっとどうでもいいことなんだ。
好きでもない、むしろ嫌いな私なんかとキスできるくらい、些細なことなんだろう。

だけど、私にとっては……。


あの日から……2年。私の最悪の誕生日から2年。


あの日、あいつを部屋になんて入れなければよかったと、今でも思う。
ちょっと、いつもより優しい気がしてしまった私がバカだったんだ。

慰めてくれるかもと期待したなんて、バカにも程がある。


……大輔くんに、キスされそうになって、突き飛ばして逃げて帰って。
その後に巽に、キス、されるなんて。


好きでもない男の子に、キスされたかもしれないってことでパニックになって、もしもキスだったらどうしようってショックでいっぱいだった。

それを、あんなふうに言わなくてもいいじゃない。
巽の言葉に意地になって思ってもいないことを言ったけど、あんなことになるなんて。


そんなことばかりをいつも考えてしまう。
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