嫌いな男 嫌いな女

「あー……そういやお前、今日大樹に告白、されたんだろ」


なんでもないことのように口にすると、美咲が驚いた表情を俺に向けた。


「……知って、たんだ」

「まあ、同じクラスだし」


なんだか言っちゃいけないことを言ってしまったような気分になる。
美咲がなんか今にも泣きそうな顔をしているから。

なんでそんな顔してんのって聞こうかと思ったとき。


「どうしたら、いいと、思う?」


ぴたり、と脚を止めて、俯きながら俺に問いかけた。
なんだそれ。
俺になんて言って欲しいんだよ。俺が言ったら断ったり付き合ったりするってのかよ。

バカじゃねえの。


「知るかよ」

「私と大樹くんが付き合ったら……巽は、どう思う?」

「知るかって。てかどーでもいいし」


立ち止まったままの美咲を置いて、歩き続ける。

俺がもしも“好きだ”って言えば、お前はどうするんだよ。“付き合うな”て言えば、そうしてくれるのかよ。

拒否するくせに。嫌がるくせに。


好きだって口にして、自覚して、俺がなんで美咲にイライラするのか、今、わかった。
他の男に笑いかける美咲が嫌いなんだ。
他の男に浮かれる美咲を見るとムカつくんだ。

独占欲だ。


こんなこと今更わかったって、無理だってことを思い知らされるだけなのに。


「巽は、よかったなって、言うの?」

「言うかそんなもん!」


思わず振り返り叫んでから、はっとした。
俺と同じタイミングで、美咲もびっくりした顔で俺を見る・

……なに言ってんだ俺は!
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