嫌いな男 嫌いな女

最近バスケ部で噂になってるのはやっぱりほんとなのかなー。
前のキャプテンと付き合っているとかなんとか。

はあーっと小さなため息を落とすと、渚が「これは?」ととあるケーキ屋の焼き菓子を指さした。

……なんでもいいんだけどなー。


「ちゃんとしたのってなに貰ったの、あんた」

「えー。なんか、丸いチョコが6個くらい入ってたやつ」

「へえースゴイじゃん。告白の返事もちゃんとしてあげなさいよ」


返事っつってもなあ。
ごめん意外に言うことなんてねーんだけど……。そもそもくれた女子のことを俺は知らねえんだよな。名前は……手紙に書いてあったっけ。

でも覚えてねえ。

正直お返しをすることもどうかと思ってる。期待させそうじゃねえ? それを渚に言ったら「貰ったならちゃんと返せ」って言われて連れて来られたんだけど。


知らないあの女子は、なんで俺を知っているんだろう。
なんで、俺を好きになったんだろう。ろくに話したことも多分無いのに。

よくわかんねえ。

真っ赤になって、震える手で、渡されたのは覚えている。
俯いていたからどんな顔をしていたのかははっきり思い出せないけれど。

俺は、マネージャーのことを好きだなあって思うけど、なんつーか。あの女子の気持ちと同じくらいの好きなのかって言われるとわかんねー。

短い手紙を読んでも、わからなかった。
俺の中で好きっていうのがなんなのかもよくわかんねーからか、嬉しいだとかそういうのも感じなかった。


悪いけど、めんどくせえなあとか、困ったなあって感じだ。

そもそも俺、甘いもの好きじゃねえんだよな。

たったひとつわかることはといえば、すげえ勇気を出してくれたんだろうなあってことくらい。

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