嫌いな男 嫌いな女

「クラスの女の子からは? 告白されてないの?」

「されてねえーって。何回言えばわかんだよ」

「そういう意味だと思うけどなあ……」


意味なんかわかるか。
はいこれーってよく喋ったこともねえ女子が渡してきただけだ。


「……そういえば、美咲ちゃんは?」


答えづらい質問が飛んできて、思わず言葉に詰まった。


「え? もらったの!? やったじゃん!」

「なにがやっただ。いらねえよあんなの」

「でも、ほら、お返ししなくちゃねー!」


あのチョコレートに……?
美咲に投げつけられたチョコレート。あれはバレンタインだったんだろうか……。
っていうが投げるってなんなんだよあいつ。しかも窓から来るとか。頭おかしいんじゃねえの?

あんなチョコになにを返せっつーんだよ。

そもそもあいつは……あいつはなんで俺に突然チョコレートなんて渡そうと思ったんだろう。

バレンタインだとしたら、なんで俺に?
関係ないのだとしたら、なんで急に?


ぼんやりとあの日のことを思い出して、美咲の後ろ姿が浮かぶ。


悠斗に、チョコレートを渡したんだろう。そして、多分、告白でもして、振られたんだと思う。話が聞こえてきたわけじゃねえし、悠斗からも聞いたわけじゃねえけど。

クラブが終わった後、体育館横から出てきた悠斗。
そして、奥で座り込んでいる美咲の後ろ姿。


……多分、泣いていたんだろう。
だから言ったのに。無理だって。ほんっとバカな女。
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