嫌いな男 嫌いな女

「なにしてんの?」


悠斗くんが教室に入ってきて、私たちに話しかける。
そばに巽がいるのかと慌てて本を閉じたけれど、悠斗くんひとりだった。


「美咲が巽の誕生日プレゼントなににしようって悩んでるから相談に乗ってるの」


相談してないし、相談に乗ってもらったのかも疑問なのですが。
っていうか由美子……! そんなことを悠斗くんに言わないで……!

告白した相手に巽のことを知られるのはちょっと恥ずかしいというか、居心地が悪いというか。


「へーなんだろうなー。俺も巽の欲しいの知らないや」


けれど、悠斗くんはそんな私の気持ちなんて気にしていなのか、いつもとおりの口調で首を傾げた。

……ほんと、私って眼中になかったんだなあ。
気にしているのは私だけなのか。

ちょっとだけ寂しけれど、もう心は傷まなかった。
好きだったときは、会話が巽のことばかりで嫌だって思うくらいだったのに。

逆に今は、なにも気にしないで話しかけてくれることに嬉しいとさえ思う。


「っていうか巽の誕生日っていつ?」

「……明日」

「まだ決めてないの!?」


わかってるよ、わかってるよー時間がないことは……。
でも決まらないんだものー。

買うなら今日行くしかないっていうのに、全く決められない。


「どーすんの美咲ー。今日は私も明宏くんも無理だよー」

「誕生日だもんね、明宏くんの。いいよ大丈夫ー」


昨日、意地を張らずにふたりに買い物に付き合ってもらえばよかった、と後悔したところで今更だ。

……うーん、どうしよう。
ひとりで行っても決められる自信がない。


「おれ付きあおうか?」

「え?」


眉間に皺を寄せて悩んでいると、悠斗くんが自分を指さしながら言う。


「男と一緒のほうが決めやすいんじゃない? もしかしたらアドバイスくらいならできるかもしれないし」

「……いい、の?」


少し考えてからそう聞くと、「もちろん」と笑顔で返事された。
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