Mr.キューピッド

「さてと、そんなことより坊主。名前は?」

腕を掴んだまま名前を尋ねてくる男の人。

「何で俺がアンタに名前を言わなきゃいけないの……っ!」

腕を剥がそうと必死に男の人の指を指でガリガリと引っ掻く。
けれど全く反応がなくて、剥がれてなんてくれなかった。

「離してよ!」

痛くてまた涙が出て来そう。
睨みながら言ってみたけれど、男の人は、『お前がちゃんと名前を言えたらな。』とか警察が迷子の子供に尋ねてるかのような口調で言ってきて、更に力を込めて俺の腕を握ってきた。
言『え』たらなって何?まるで俺が自分の名前を言えないみたいな言い方してきやがって……!

「天宮七音だよっ!早く離して!!」

でないと俺の腕がもげる気がする。

「ほほぉ、名前もちゃんと言えるのか。」
「普通言えるでしょ!?」

この人さっきから何を言ってるの?
頭の中可笑しいんじゃないの?
男の人は静かに俺の腕を離すと、ぶつぶつと何かを呟いて、考えるポーズをしながら俺を見下ろす。

(な、何なんだよぉ……!)

この人一体今何を考えてるの?
名前言うんじゃなかったかな……何か怖いよ。


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