Mr.キューピッド

で、本題に戻るけれど、俺がキューピッドになった理由は何度も言うように隣にいる滝本さんのせい。
滝本さんと仲の良い死神に聞いたのだけれど、俺は滝本さんの書いた『シナリオ』によって死んでしまったんだって。
本当は死ぬ予定なんてなかったんだ。あの看板の事故に巻き込まれたとしても、無事に妹を守って何事もなかったかのようにこの先も生きられる筈だった。
けれど、他の人が書いた『シナリオ』によって、俺の運命は狂ってしまい、あの日看板の下敷きにされて死んだ。
その責任として、滝本さんが俺の面倒を見ることになったんだ。
滝本さんの職業はキューピッドだったから、俺は選ぶ権利を与えられずに面倒を見るためだけにキューピッドにさせられて……今に至る。

「今日の仕事は病院で入院中の学生の手伝いだ。『シナリオ』を使って良いのは1日3回までだからな?よく考えてから使えよ?」
「分かりました。」
「そんじゃ、行くぜ。」

とある部屋の一室にある大きな扉の目の前に立つ。
扉はギシギシと音を立てながらゆっくりと開いてゆき、目の前には『青』一色が広がった。
その『青』へ滝本さんと俺は手を伸ばすと、『青』は触れた振動で円を描き、俺達を呑み込む。
そして、『青』に呑み込まれた俺達の目の前に、澄んだ『青』い空が広がって、

(3年使ってるのに未だに慣れない!!)

ビルがいっぱいある『世界』へと堕ちていった。


今日も1日、頑張ろう。




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