Mr.キューピッド

「とにかく出てけ!今すぐだ!!」
「「ケチ!!」」
「ケチじゃねぇよ不法侵入者が!!」

俺は2人の背中をグイグイと押して部屋の出口へと連れて行き、扉を開けて2人をおもいっきり押し出した。

「いてっ。」

腕をぶつけてそう呟きつつ、何故か頬を擦る輝明。
そして涙目でこっちを見てくる。

「いてぇよナナト……虫歯に響いた。」
「虫歯!?」

そう言うと、輝明は流れてきた涙を拭った。
腕をぶつけて虫歯に響くとかどんだけだよ。
しかも良く見ると腫れてるし……どうして腕をぶつけるまで痛まなかったんだ。

「ああ、思い出したわ!」

部屋から出して放置していた雪路は、右手をグーに、左手をパーにして、左手の手のひらを上に向けてそのまま上からグーを下ろして、『ポンッ』という音を立てた。

「テルちゃんがナナトちゃんに歯医者に付き添ってほしいっていうから押し掛けに来たのよ!」
「は?」
「あ、そうだった!」
「え?」

輝明は雪路の言葉を聞いて、俺の手を握って目を輝かせる。
って言うか何だその小学生みたいな考えは……。

「怖いから着いてきてくれ!」

親指を立てて『トイレ行こうぜ』的なノリで俺に言う輝明。

「子供かお前はぁぁあ!!」

その一言を聞いて、俺は握られた手を払い、そして部屋の扉を強く閉めた。

(って言うか何で俺……?)

雪路がいるなら雪路に連れてって貰えよ輝明。


< 38 / 40 >

この作品をシェア

pagetop