続きは、社長室で。


彼女を見ていると、苦しみしか生まれナイよ・・・



「ッ・・・」

真向かいに座る彼女と視線が合致しないよう、俯いてしまう。





「蘭さん…、申し訳ございません――」


「え・・・」


彼女から発せられた謝罪に驚嘆して、ゆっくりと顔を上げた。


すると佳奈子さんは、座ったままで深々と頭を下げている。




どうして・・・?






「私は東条社長の婚約者ではありません…」



「っ・・・」


それは衝撃的で、天変地異が起こりそうな言葉で。




「私は雅貴様に幼少から仕えている者で、現在は当社の監査部に勤めております。

そして多大なご迷惑をお掛けした立川 悟は、私の兄なんです…。

私も兄も…、後藤家に仕える身でして・・・

絶対主君の雅貴様には、一切逆らえませんでした。

東条社長の婚約者に成りすますよう、命ぜられても・・・

貴方を傷つけてしまって、本当にごめんなさい――」




何が…、起きているの――?



グルグルと駆け巡る想いに、まったくついて行けない中で。


頭を下げたままの彼女を、ぼんやりと捉えていた。




< 249 / 266 >

この作品をシェア

pagetop