続きは、社長室で。


今日もまた箱型の密室空間に苦しみつつ、必死で耐えている私。



そんなエレベーターから開放されると、到着した先は最上階のフロア。



闊歩していく彼の後ろに、今日もついてフロアを歩いて行く。




此処は、会長室や社長室をはじめとして。



専務室、常務室と、役員室が連なっている階なのだ。



広々とした開放感のある造りが、このフロアのコンセプトらしい。



だけれど、社長室だけは異質なモノだと思う・・・






「どうぞ――」


「ああ――」


温か味などナイ簡素な言葉で、カバンの授受をするのが毎朝の恒例。




これさえも、私にとっては我慢のトキだというのに…。




「っ・・・」


カバンを渡す時に少しだけ触れる、骨ばったしなやかな指先。



ふわりと鼻腔を掠めていく、ホワイトムスクの甘い香り。




気を保とうとしても、一瞬で私の心を容易く囚えてしまうから・・・




どんなに頑丈な鍵さえも、敵わないと告げられているよう――




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