花火


しばらくのパソコンのカーソルの音の後、隼人はふいに顔を上げた。


「行ってみる?」


「うん!」


「うれしそ〜」


そう笑いながら隼人は財布をジーパンのポケットにつっこむ。


「だってバッティングセンターって初めてなんだもん」


2人そろって階段を降りた。


でも、もちろんこんなにうれしいのはそんなことが理由じゃなくって。


すぐ近所ということは隼人と並んで歩ける。


こうやってゆっくり歩くとき隼人はいつも。


「手、つなごっか」


私はいつも冷たい隼人の手を暖めるようにつなぐ。


そうだ、冬になったら手袋をプレゼントしてあげよう。

ブラウンの、シンプルなやつがいいな。


きっと、似合うにきまってる。


「何にやにやしてんの?」


「別に〜」


こんなやりとりがある時は、必ず隼人は私を余裕な、でも優しい目で見つめながら笑う。


そんな時、隼人が私よりも歳上なんだと思う。


私よりも大人なんだ、と。

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