花火
「私はきっと未来さんには勝てなかったんです。
きっと、一生…。
ずるいですよね。
…死んじゃうなんて。
未来さんは、死ぬことで一生、隼人の心の一番の地位を手に入れたんですよ。
私が死んだら、隼人は私を一番にしてくれるかなぁ…。
未来さんより、私を愛してくれるかなぁ…」
「なぜ、詮索しようと思わなかったんだい?」
「わかんないです…。
優くんの目が、優しかったから、優くんの想いを傷つけたくなかったのかもしれません。
でも…たぶん一番は…」
「一番は?」
刑事は優しく私の語尾を繰り返した。
こういうしゃべり方は、相手から話を聞き出すための一種のマインドコントロールだと聞いたことがある。
「たぶん、怖かったんです」
「…怖かった?」
「何がか、はよくわかりません。
私の知らない隼人がいることを知ってしまうことがなのか、私の知らない隼人の想いを知ることなのか…。
でもひとつ言えることは、何かが崩れてしまうような気がしたんです」
刑事は、もう何杯目だろう。新たに注がれたコーヒーをスプーンでかきまぜる。
「…続けて」
「私が初めて見た未来さんは、すごくいい笑顔でした。
目がキラキラ輝いてて…。
たまに、誰からも好かれる人っていますよね。
あの子をキライっていう人はいないって言われる人。
見ただけで未来さんはそんな人だったんだろうなって思ったんです」