【短編】THE EXPRESS
「あ、君も困ってるの?」
「あっ……はい」
「どうしよっか。親父何とかなんない?」
『君』だー――!!!
あんなに憧れてたのに……。
毎日見てたのに……。
それなのに、こんなに近くにいる。
君の隣にいる。
心臓が破裂しそうだ……。
「んー、どうにもな……。今ちょっと手間取ってるみたいだから……」
「あとどんくらい?」
「少なくとも一時間は……」
思ったよりちょっと低い声。
思ったより高い身長。
……カッコイイかも。
「あのさ、君いつも向かい側のホームによく友達といるよね?」
「あっ!!はい!!」
「……ところで名前聞いていい?
俺、佐藤 賢矢。季成高等学校二年生」
「笹木 志穂、成華学園一年生です」
「よろしくね」
「じゃあ、笹木さん、車掌室に入れてもいいかな?」
「ああ。変に機械いじるなよ」
「はいはーい」