レインブルー
彼女は俺の唯一の居場所だった。
学校を出て大通りをまっすぐ歩き、二番目の信号の手前にある道を左に曲がる。
人一人がやっと通れるような狭い道を下っていくと、やがて青いレンガの家がある。
そこが俺の家だ。
誰もいないリビングの電気を点けると、食卓に今日の夕飯と一緒にメモ書きが一枚添えられていた。
――しばらく帰らない。母。
また会社に缶詰めか。
そう呟きながら俺は心の中で好都合だと思った。
二階に続く階段に目をやりながら、帰りに買ってきたお弁当と水を用意する。
「今日の夕飯です」
そう言ってお弁当と水を扉の奥に差し出したが相変わらず返答はない。
扉を閉める直前にわずかな隙間から、今朝用意した食パンと牛乳が見えた。
全く手をつけていない状態だった。