真夏の深海魚
外は殺人的な日差しで、
三十秒ぐらいで汗だくになってしまった。

やっとの思いで電車に乗り、
神保町の駅で降りると、懐かしい風景が出迎えてくれた。

僕は暑さも忘れて、古本屋、中古レコード屋などを次々に巡り、学生時代の思い出に耽った。

そうこうしているうちに、自然とその喫茶店までたどり着いていた。

歩き疲れた人が最後にたどり着くような、
昔からそういう店だった。

店内に入ると、椅子やテーブル、カウンターや照明、天井や壁に至るまで、何一つ変わっていないことが嬉しかった。

昔と同じように、奥の一番端にあるテーブル席に座った。

すると、向かいの席に座っている女の子が、
じっとこちらを見ていることに、
僕はようやく気がついたのだ。
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