真夏の深海魚
プール
季節―夏。
空はどんな青よりも青く、雲はどんな白よりも白い。
例年よりも暑く力強い夏だった。

昨夜はかなり飲んだはずだが、不思議と二日酔いにはならず、目覚めも良かった。
洗面所に行って顔を洗い、歯を磨き、髭を剃った。
スーツに着替えようとクローゼットを開けたところで、今日が日曜だということに気が付いた。
昨夜、恋人と別れたことを思い出し、何もすることがないということにも気が付いた。日曜はいつも彼女と会うことになっていたからだ。
しかたなく僕は、一人でプールへ行くことにした。
バスに揺られ、ぼんやりと外を眺める。このまま消えてしまいたかった。
最寄りの停留所を告げるアナウンスが流れ、降車ボタンを押し、停車するのを待ってから、ゆっくりバスを降りた。
この時期にしては比較的すいてる方だった。とは言っても、真夏の市民プールには家族連れや学生のカップルなんかが多く、僕はぶつからないように前後左右を気にかけながら泳がなくてはならなかった。

帰りがけにレンタルビデオ店に寄り、なるべく眠くならなそうなアクションものなどを数本借りてきて、部屋でビールを飲みながら、どの映画も出来る限り主人公の気持ちになって鑑賞した。
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