HEAVEN

「バカ言うんじゃないよ…あんたみたいなトロの言う事なんか信じる奴はいるかい」

そう穏やかにりえさんは吐き捨てる。

初めてこの人に会ったのが
20の時、あれからもう5年の歳月が経った。

「私もあなたも…老けましたね…」

「なにを言うの…私はまだまだピチピチの34さね…」

茶をゆっくりと小椀に注いで
私に差し出す彼女の手は、疲れていた。


「りえさん…
天国は、あると思います?」

私は何気なく聞いた。

きっとあの日の彼女と、同じ瞳で―。

「…
さぁてね、知りたきゃあんたが見に
おいきよ。

どうせお店に出ても大した事はできないんだからさ」

そして 彼女は静かに微笑む。

「昨日あんたのお母さんが来たんだよ」

私は思わず視線を動かす。

動かした先は、彼女の唇だった。
< 17 / 50 >

この作品をシェア

pagetop