大好きだよ。
 
 呟きは、誰に届くことなく消えていく。
 彼女の呼び掛けにすら、応えてやれない。
 不甲斐ない自分を、嘲笑ってやりたかった。

「ゆうすけ、ゆうすけ」

「はるか、そんなに泣いたらゆうすけが困るだろ」

 俺じゃないやつが、彼女をなだめる。
 そうだよ、やめろよ。俺なんかのために、もう泣くなよ。

「ゆうすけぇ、大好きだよぉー」

 その言葉が耳に届いた時、俺はハッとして彼女に視線を落とした。

「大好きだよ、ゆうすけ。大好きだよ」

 何度も何度も彼女の口から紡がれる言葉が、俺の胸を優しく締め付けた。
 涙でぐしゃぐしゃの顔をシャツの裾で拭い、懸命に想いを訴えてくる彼女が愛しくて仕方なかった。

「━━俺も」

 気づいたら、泣いていた。
 どうせ届かないのに、何度も何度も彼女への想いを叫んでいた。

「俺も、大好きだよっ」

 君に出会ったから、こんなにも人を愛することができた。
 君に出会ったから、こんなにも自分を認めることができた。
 君に出会ったから、俺は幸せでいられたんだ。
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