勝手にハニーキス
遊び人の素顔



静奈が学校を休み、落ち込む拓斗の所へ明日香がやって来たのは午前の授業が終わった時の事。



うつろな瞳で顔を上げる拓斗と、緊張して固まる歩。



「昨日の事、忘れてあげてね」



それだけ言うと去っていく後姿。二つに分けて結んだ髪が揺れながら遠ざかるのを目をハートにして見ていた歩だったが不意に廊下から落ちる視線に気付く。



「あの先輩達……また来てる?」



一度目は気にも留めなかったけれど、今日は妙な胸騒ぎがした。周りを見る余裕のない拓斗はそこに置いたまま、トイレに行くフリをして立ち上がり……



そのまま廊下の角を曲がると、メガネの先輩とぶつかりそうになり一瞬よろけてしまう。



そんな歩には気付かずその男は口を開く。



「お前ら、静奈ちゃんだったら今日は休みだぜ?」



「何で知ってんだよ」



「直接聞いたから?」



楽しそうにおどけてみせるその男は沼田と呼ばれていて……聞いてはいけないことを聞いてしまった気がして歩の動きもそこで止まったまま、それでもさっきの言葉を頭の中で反芻する。



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