涙恋~RUIRENの魔法~
愛の終止符
麻酔から目ざめた私の視界に
入ったものを見て
体中が凍りついた。

   死の使者?
   死刑執行人?


胸がムカムカして
嘔吐する。

使者は背中を優しくさする。

「大丈夫?」

嘔吐は拒否反応?
それとも
あなたからの罰?


嘔吐で汚れた顔を
優しく拭いてくれた。


「かわいそうに・・・・・・
つらかったでしょう?
手術は終わったからね・・・・・
次は、望まれる赤ちゃんを
産んであげてね・・・・・」


優しい笑顔で微笑むその使者は

優の奥さんだった・・・・・


  どうして・・・・・
  こんなところで・・・・・
  それもこんな時に・・・・・

奥さんは私を知らない
でも私は
奥さんを知っていた。



中村 理恵子


看護師のネームプレイトには
中村 の文字



嘔吐が続く・・・・・
私の悪魔がヘドロを吐く


それを優の奥さんが
優しく片付ける


「すみません・・・・・
ごめんなさい・・・・・」
必死で言った。


理恵子さんが

「あなたも苦しいのだから
気にしないで・・・・
それが私の役目・・・・・・
かわいそうに・・・・・・
幸せになるのよ・・・・・・・」

看護師のいたわりの言葉なのに
私の胸を優しく包んだ。


  許してくれますか?
  あなたを不安にさせました・・・・
  ごめんなさい


私は心の中で何度も言った。


「お腹に赤ちゃんいるんですね。
さわってもいいですか?」

理恵子さんは
悲しく微笑み
私の手を握り
お腹に当てさせた。
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