僕と平安貴族の五日間

 おおおお!!


 これは核心に迫る質問だ。


 僕はすかさず殿のほうを見た。


 殿は冷酒の入ったグラスを口に運ぶところだった。


 その所作一つ一つがなんとも神々しい。


「はて、かのじょ、とは」


 と、殿は口の端をクイッとあげて、


 長いまつ毛を伏せて、喉を潤していた。


 おおおおお!!!


 なんと!!!


 殿は多分、カノジョ(イマドキっぽい発音)という


 言葉の意味をわかっていないかと


 思ったのだが、


 持ち前の恋愛場数の多さと、器量で


 見事レベル4のトリプルアクセルのように決めたのだ!


 僕は改めて殿の百戦錬磨を目の当たりにした。


 そのとき、愛甲くんが殿に対して、


 ライバル心をメラメラに抱いていたとは、


 僕は知る由もなかった。
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