星の降る線路の上で
「シンジが本当にその夢を諦めていたらね…」
「……」
遠い過去の自分に直接語りかけるような少女の言葉に、三崎は言葉を詰まらせる。
三崎はその言葉の真意を確かめようとするが、少女はその視線を交わすように背を向けると先に歩きだす。
「もう見えないんだ…星の世界が。あの頃は手を伸ばせば届きそうなくらい、すぐ傍に星の世界があった…目を閉じれば、いつでも瞼の向こうに描く事が出来た…」
三崎は後ろめたさを振り払うように首を振ると璃子に…あるいは過去の自分自身に訴えかけた。
「でも、今はもう、どこにも無い…どこを探してもね。同じ本を読んでも、あの頃見たいにときめかなくなったし、上手く星の世界を描く事が出来なくなった、心の中に…理由は簡単さ…」
その言葉の通り、三崎は一番安易に全てを終わらせる一言で結論を出した。
「大人になってしまったんだ…知らないうちに」
「違うよ、シンジ」
少女があっさりと否定する。
「大人になったんじゃなくて…」
璃子は足を止めゆっくりと振り返ると、三崎の顔を覗き込む。
透き通った瞳に息を呑む三崎に優しく微笑むと、もう一つの結論を口にした。
「子供じゃなくなった…ただ、それだけ」
キョトンとする三崎に悪戯っぽくウインクすると、璃子は再び前を向いて歩きだす。
「それだけ…ね」
三崎はほっとしたように胸を撫で下ろしその言葉をなぞると、ふと思い出したように璃子の背中に問いかけていた。
「なあ、お前は将来何になりたいんだ?」
「あたし…?」
そんな質問をされる事を夢にも思ってなかったのか…少し戸惑ったような声をあげる。
「お前も何かあるんだろ?将来の夢とか、なりたいものとか…」
「あたし…」
そう口にしたまま少しの間沈黙していた璃子が、消えそうなくらい小さな声でぽつりと言った。
「幸せになりたい…」


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