戦国遊戯
「あははははは!」

壊れたように笑い出す学に、玲子ははっと顔を上げた。目の前にいたはずの学の姿がなくなっている。玲子は慌ててあたりをきょろきょろ見回した。

「君だって結局、自分の望んだように生きられないんじゃないか」

ふらふらとした足取りで、近くに倒れている兵のもとへと近寄っていく学。玲子は顔をしかめながら学の行動をじっと見つめた。

「あぁ…なんてかわいそうなんだ」

大げさな演技でもするかの様に、学はバッと両手を高く、まっすぐにあげた。全員の視線が、学に集まる。学の様子がおかしい。誰が見ても、そうとしか思えない。そんな状態だった。

ふっと、手を下ろし、学は玲子をの方へと顔だけを向け、死んだ魚のような目で玲子を見つめた。

「そんな可愛そうな君を、俺が助けてあげるよ」

にたっと笑う。玲子はその表情に鳥肌が立った。
学は、言うやいなや、狂気染みた表情で、にやにやと笑いながら落ちていた刀を手に取り、くるりと玲子のほうへと向きを戻した。
そして、今までの学とは、まるで別人のように俊敏な動きで、突然、玲子に向かって刀を突き出して走り出した。

学のその一連の動作に、玲子は驚き、そして、対応が一瞬遅れた。



コロサレル。



避けることも、反撃することも。どちらももう遅い。
間に合わない。手遅れだ。




玲子は死を覚悟した。
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