戦国遊戯
1人では(いろんな意味で)危ないし、ということで、さよのお団子をまた買いに、一緒についていった。もちろん、幸村にも一緒に来てもらった。

「あら、さよちゃん。どうしたの?」

お店の人らしき女の人に、声をかけられていた。

「あのね、さっき買ったお団子、落としちゃったの」

さよが答えた。そのとき、さよの後ろにいた、私と幸村に気づいた。

「きゃっ・・・え、ゆ、幸村様!?」

女の人は思わず一歩後ずさった。幸村は、かまわず事情を説明した。

「たちの悪い連中に絡まれてしまって、団子を落としてしまったそうだ。それで、もう一度、団子を買いたい。いくらになる?」

「えぇ!そ、そんな、幸村様から御代なんていただけません!」

あわてて手を振る。しかし、幸村はそれを頑として、断った。

「それはだめだ。物を買うには金が要る。それは、侍だろうと、大名だろうと、商人だろうと、農民だろうとかわりはしない。俺が、団子を買うのであれば、きちんと金を払うのが道理だ」

そう言って、布の財布のようなものを取り出し、中から小さな石のようなものを取り出した。

女の人は、ありがとうございます、というと、あわててパタパタとお店の中へと入っていった。

「名前、まだ言ってなかったね。私は、玲子。お嬢ちゃんは、さよちゃんって言うのね?」

「うん!」

さよの前にかがんで、同じ目線で話をしかけると、にっこり笑ってさよが答えた。可愛すぎて、持って帰りたくなる。
思わず頭をくしゃくしゃっと撫でた。

「幸村さん、ありがとう」

上をむいて、幸村の方を見た。

「え?」

「お団子代。ありがとう」

「お兄ちゃん、ありがとう」

私がお礼を言ったのをみて、さよも続いて御礼を言った。幸村は、いや、と短く言って目線をそらした。顔が真っ赤だった。
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