戦国遊戯
「おまたせしました」

女の人が、包みを持ってお店の中から出てきた。

「はい、さよちゃん。気をつけて持って帰ってね」

そう言って、お団子を渡した。さよは大きく頷いた。

「幸村様、こちらおつりです。またどうぞ、ご贔屓に」

深々と頭を下げてきた。幸村は、その姿をみて、では、と言って、店を後にした。


さよちゃんを家まで送り、信玄の家へと向った。幸村は、少し難しい顔をしていた。

「幸村さん。どうかしたんですか?」

聞くと、幸村は、じっとこっちを見てきた。

「な、なんですか・・・」

恥ずかしくなって、つい目線を下に落とした。
しばらく沈黙が続いた。

もう少しで、信玄邸に到着するというところで、幸村が口を開いた。

「玲子。お主と一度、手合わせ願いたい」

「は?」

幸村の言葉に、思わず眉を顰めた。


何言ってんのよ、この人。


「なんでまた」

不思議そうに尋ねると、幸村は真剣な眼差しで答えた。

「いや、いくら弱いとはいえ、大人の男5人に対して、玲子は1人で戦い、勝ったわけだ。玲子のお手並みを拝見したい」

じっとこっちを見つめてくる。勘弁して欲しい。

「だから、相手が弱かっただけだって。私はそんな強くないし」

「運がよかっただけなのかもしれないが、俺は、玲子と手合わせ願いたい」


この真剣な顔…私のこと、女だって忘れてんじゃないでしょうね・・・


「・・・わかりました。1度だけですよ」

そう言って、しぶしぶ、了承した。

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