戦国遊戯
どれだけの兵士を倒していったかわからない。肩で息をしながら、前へと進んだ。

ドカドカドカドカドカ

遠くから、何かが近づいてくる音がした。一瞬、玲子も、周りの兵士達も、動きが止まる。

「柿崎様だ!」

上杉軍からわぁっと歓声が上がった。目の前で対峙していた兵を突き飛ばし、紙一重で馬上からの柿崎の攻撃を避けた。頬にピッと切り傷ができる。


…しまった、馬に乗った人間との戦い方なんてわかんない。


自分の獲物は、ただでさえ短いのだ、この状態では、まともに勝負に挑むことができない。柿崎が迂回して戻ってくる。


どうする、どうする、どうする!


必死で頭の中を回転させるが、そうする間にも、柿崎が槍を構えて迫ってくる。


――――――一か八かだ。


脇差を構えて、柿崎に対峙する。

柿崎が槍で一撃、突いてくる。
脇差で、切っ先の方向を変えて、自分の脇すれすれの所を通す。槍の刃と、脇差の刃がこすれて、火花が散った。

「くぅ…!」

刃の部分が通り過ぎ、柿崎が、自分の横を通り過ぎていく瞬間、槍をつかんで、思いっきり引っ張った。

「うわぁ!」

柿崎のバランスが崩れる。保とうにも、猛スピードで走っている馬の上。バランスを保つことができず、そのまま馬の上から落ちた。すかさず、柿崎の上に、馬乗りになるような形で乗り、両腕を自分の両膝で押さえつけ、脇差の切っ先を、柿崎の喉に突きつける。

「…はぁ、はぁ…っっは!」

必死で息をする。


…これが、戦。
これが…これが……
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