戦国遊戯
「動かないで!動いたら……」

その先を言う事ができなかった。怖くて、どうしても、口にできなかった。

「何をしている、早く殺さぬか!」

「なっ!?」

柿崎の一言に、兵士達がびくりとして、わぁっとかかってきた。


――――――まずい!


やられる!そう思ったときだった。ガキン!という、鈍い金属音がした。ゆっくりと目を開けると、そこには、武田軍の兵達がいた。

「だ、大丈夫ですか!玲子様!?」

数名の兵士達が駆け寄ってきてくれた。

「あ、ありがとう、助かったよ!」

少し涙目になりながらも、周りの兵達が必死で応戦してくれていた。

「あなた、敵の武将ね!?申し訳ないけど、縄、かけさせてもらうから」

そう言って、駆け寄ってきた兵士から、縄をもらって、柿崎にかけた。

「な、何をする!?」

柿崎が暴れた。

「ちょっと!暴れないでよ!」

怒ると、柿崎がキッとにらみつけてきた。

「…このような、縄目の屈辱を味わうくらいなら、いっそ…!」


まずい!


本能的に、直感した。
多分、舌を噛み切る気だ!

「だめっ!」

柿崎の口の中に、両手を突っ込んだ。周りの兵達の動きが、一瞬止まった。

思いっきり、柿崎にかまれる。

「いたぁ!」

目から涙がこぼれた。柿崎は、驚いたようにこっちを見る。

「だめ!何があっても、そんなことしちゃだめだよ!」

そう言って、兵士から手ぬぐいを借りて、猿轡をさせた。手には、歯の跡がくっきりとついて、血がぼとぼとと落ちてた。
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