【短編集】現代版おとぎ話

「どれくらい大切か知ってる?」

「うん。」



知ってるよ。



幼稚園の時。

エスカレーターに乗れなくって一人取り残されたら、

あなた逆走して助けに来てくれたよね。

4歳の逆走なんて危険だって、なぜか怒られちゃってたっけ。



小学生の時。

自由研究で探検に行ったあたし。

迷子になっちゃって、大泣きしながら川原に座ってたら、

あなたは自転車に乗って息大きく乱しながらあたしを見つけてくれた。

「どうしてわかるの?」って言ったら、

「お前のことはなんでもわかる。」ってニッと笑ってくれたよね。



中学生の時。

体育祭で、転んで足くじいちゃったんだよね。

必死に隠してたのに、あなただけは気づいちゃって、

回りの声も気にせずにお姫様抱っこで保健室連れてってくれたね。

その時の彼女に、ホッペに紅葉型つけられてたの覚えてるよ。



高校生の時。

人気のあるあなたの傍にいすぎるせいで、

あたし呼び出し食らっちゃったんだよね。

そうしたら走って助けに来てくれて、すごい剣幕で怒ってくれた。

ごめんな、って優しい声に安心して、あたし子供みたいに大泣きしたね。



知ってるよ。知ってる。

彼女とは違う意味で、あなたはあたしのことを大切にしてくれてる。

一番にしてくれてる。


でもね、何度も言ってるでしょ?

あたし、わがまましたいのよ。




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