【短編集】現代版おとぎ話
ティンカーベル
「へへっ、大量大量!」

「相変わらずおモテになることで。」

「うらやましいだろー。」



どちらかと言えば、素直に渡せる女の子たちがね。

あぁ、もう。

どうしてあたしこんなに素直になれないんだろ。

何も言えないくせに、ヤキモチばっかりいつも焼いちゃう。

今日は一年に一度の女の子達の大イベント、バレンタイン。

可愛らしい包装の箱が詰められた白い紙袋を両腕で抱える隣の彼は、あたしの幼なじみ。



「何?」

「べっつにー。」



見つめていれば顔を覗き込まれて、ツンと顔をそらした。

コイツは本当によくモテる。

幼稚園も、小学校も、中学も、今高校も。



常に隣にいるあたしはいっつも見てきた。

いつも教えて貰ってた。いつも知ってる。

告白も。デートも。キスのことも。



ねぇ、貴方知ってるの?

あたしがどんな気持ちで聞いてるか。

どんな気持ちで見ているか。



「ねぇ。」

「んー?」

「あたしのことどう思ってんのよ。」



たまには直球勝負。

答えなんて知ってるけど。



「大切なパートナーだぜ。」

「うん。」



知ってるわよ。

ペアでやるものはずっと一緒なんだから。

だけど、もっと特別なパートナーにしてもらいたいのはわがままなの?



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