世界の灰色の部分
1時間6千円。指名料別。焼酎飲み放題。女の子のドリンク別。
「今ならそこを1時間5千円、5千円っす!そこのオニイサン達、どうっすか!?え、えー、そうっすねぇ、…はい、じゃあ今回だけっすよ、わっかりました!1時間4500円で。あざーっす!」

今日も、店の前では客引きのオニーチャンが通っていくオヤジや若者を見つけては、必死に声をかけてる。

都心から少し離れた、生活臭漂う町の、駅裏通りの界隈。
居酒屋が並び、その少し奥に入れば、カラオケパブだのスナックだのクラブだの、そういった店の集合地。
ただし、銀座や歌舞伎町なんかが持つようなの夜の貫禄はかけらもない。
平日の店内は閑古鳥が鳴き、シャンパンを頼む客なんて、週末に見るか見ないか。通りの前では客引きがどんどん店の値打ちを下げ、通る男たちを逃がすもんかとする。
うちだけじゃなくて、きっとこの近辺じゃどこの店もそんなもんだと思う。

そんな世の中でもっともどうしようもないような場所にある、ちんけなキャバクラ。
そこが、わたしの勤め先。



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