世界の灰色の部分
ある週末。
その日店にはリナさん指名でよく来る、おそらくどっかの組の人間のなのであろう団体客が来ていて、それなりに忙しかった。
わたしもそのテーブルについたり、キャッチで入れられてきた客についたりと、それなりに忙しくしていた。
「瑞穂、次もっかいリナ指名の団体んとこついて」
一組客を見送って戻ってくると、店長にそういわれた。
「いいけど、リナさんまだ戻ってきてないんだよね?」
わたしはバックルームの扉の隙間から、店内を覗き見た。
さっきわたしがその団体客についてから1時間近く経つというのに、リナさんはそのときから、団体客より少し前に一人で入ってきた男の席につきっきりで、ボーイが指名が入ったからと声をかけにいっても、ちっとも動こうとしないのだ。
「ああ、もう代われって言ってんだけどな。もっかい俺声かけっから、お前席ついたらすぐリナも来るってゆっといて」
「…はーい」
団体客のうちの一番偉いのであろう、坊主頭でガタイのいい白いジャージの男は、すでに笑っていなかった。
隣に座っていた女の子たちが、必死に盛り上げようとしているのが伝わってきた。
「瑞穂です、また戻ってきちゃいました。おじゃましまーす」
なるべく明るい声で席に行く。
「ねぇオネエチャン、それはいんだけど俺らリナ指名してんだよ。もう1時間くらい待たされてる。おかしいでしょこれ」
見た感じ2番目に偉そうなオールバックにサングラスの男にそう言われる。
「ごめんなさい、リナさんもすぐ来るっていうんだけど…あ、ほら、あのお客さん帰ったら今来るよ」
見ると、奥の方にいた例の客とリナさんが、席を立ち、並んで店の出口に向かっていた。
痩せていて背の高い、少し長めの髪の若い男。
すると出口のすぐそばまで行ったとき、男はリナさんの耳もとで何かを言った。
その途端、突然リナさんは男の腕をつかみ、くずれるようにその場にへたりこんだ。
「ちょっと、なんでそんなこと言うの!?あたしマサちゃんのこと本気で好きなんだよ!?別れたくなんかないよ!!」
そのまま店内に、彼女のよく通る声が響いた。
その日店にはリナさん指名でよく来る、おそらくどっかの組の人間のなのであろう団体客が来ていて、それなりに忙しかった。
わたしもそのテーブルについたり、キャッチで入れられてきた客についたりと、それなりに忙しくしていた。
「瑞穂、次もっかいリナ指名の団体んとこついて」
一組客を見送って戻ってくると、店長にそういわれた。
「いいけど、リナさんまだ戻ってきてないんだよね?」
わたしはバックルームの扉の隙間から、店内を覗き見た。
さっきわたしがその団体客についてから1時間近く経つというのに、リナさんはそのときから、団体客より少し前に一人で入ってきた男の席につきっきりで、ボーイが指名が入ったからと声をかけにいっても、ちっとも動こうとしないのだ。
「ああ、もう代われって言ってんだけどな。もっかい俺声かけっから、お前席ついたらすぐリナも来るってゆっといて」
「…はーい」
団体客のうちの一番偉いのであろう、坊主頭でガタイのいい白いジャージの男は、すでに笑っていなかった。
隣に座っていた女の子たちが、必死に盛り上げようとしているのが伝わってきた。
「瑞穂です、また戻ってきちゃいました。おじゃましまーす」
なるべく明るい声で席に行く。
「ねぇオネエチャン、それはいんだけど俺らリナ指名してんだよ。もう1時間くらい待たされてる。おかしいでしょこれ」
見た感じ2番目に偉そうなオールバックにサングラスの男にそう言われる。
「ごめんなさい、リナさんもすぐ来るっていうんだけど…あ、ほら、あのお客さん帰ったら今来るよ」
見ると、奥の方にいた例の客とリナさんが、席を立ち、並んで店の出口に向かっていた。
痩せていて背の高い、少し長めの髪の若い男。
すると出口のすぐそばまで行ったとき、男はリナさんの耳もとで何かを言った。
その途端、突然リナさんは男の腕をつかみ、くずれるようにその場にへたりこんだ。
「ちょっと、なんでそんなこと言うの!?あたしマサちゃんのこと本気で好きなんだよ!?別れたくなんかないよ!!」
そのまま店内に、彼女のよく通る声が響いた。