世界の灰色の部分
きっかけは、ふとした瞬間だった。
夕方、暗くなった部屋で電気もつけずに、制服のままベットに横たわっていたわたし。
そんなわたしの耳に、微かなブブ…という振動音が届いた。
そこで、数日ぶりに、わたしの頭に意識がやどった。
ああ、携帯、そういえばあれからずっと触れてもいないや。
充電器につながれ部屋の片隅で振るえていた携帯電話を手にとった。
メールだ。
客からだった。
『瑞穂ちゃんどうしたの?最近連絡つかなくてさびしいじゃん今日約束してた日だから店行くね』
ああ、今日はもう金曜日なのか。
見るとその客も含め、他にも数人の客からメールや着信が貯まっていた。
ケンくんとが終わってしまったというのに、こちらはしっかりついてくるのだという現実を思い知らされる。

その夜わたしは夕食を食べ終え、数日ぶりに夜の化粧をした。
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