ディーダラス2064
月面行きの宇宙船は窮屈な生活を余儀なくさせられた。
円柱形で直径10メートル 長さ50メートルといった機能も見た目もシンプルなその船体は人類の現時点での活動影響力の限界を感じさせた。

月面で我々を待っていてくれるディーダラス01がどのような立派なものかは別として
これから永いミッションとなる自分を含めた仲間たちの快適な生活を保障するものであらんことを切に願っていた。

地球を出発して2日後、月面の赤道上の軌道を取り巻くように建造された無数の巨大なパイプ建造物が目に入って形がはっきり見える頃は、既にそのパイプ群と対になったかのような浮遊固定アームに船体はつかまり、巨大なチューヴに沿うように月面都市へ曳航されていった。

そんな折 外部とまるで隔絶化されでもしていたかのような月面航路の宇宙船での生活から開放されでもしたかのような、地球発のカオル宛のメールカードがカオルに手渡された
小指の爪ほどのチップで 変化を望まないのなら一生分当人に届くメッセージ映像が収録できる大容量のカードチップだ。

ジョングレン とスチュアート そしてナオヤにも地上からのメッセージカードが手渡されていたらしかった。

人類最大の月面都市は、まるでスズメバチの巣によく似たような形をしたものがか細い固定アームに支えられ何棟も上空へとせり出した外観をしていた。 それら一つ一つがとてつもなく巨大なもので、その足元からは無数にリニア鉄道が月面の拠点の要所要所へとむけて発せられていた。
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