-恐怖夜話-
雅美は、楽しそうな声を上げながら、握っていた黒マジックで、写真の一枚に『キュッ』っと小さなマルを付ける。
次の写真には、もう少し大きなマル。
次は、細長いマル。
一枚、
又一枚と、
雅美の描く大小様々ないびつなマルが、その数を増やしていくのを、私と若菜は声もなくただ見ていた。
キュッ、キュッ、キュッ。
永遠に続くかと思えたその作業は不意に終わりを告げ、雅美は写真の一枚を私と若菜に『見ろ』とばかりに付きだした。
若菜と二人、その写真に目を向けた瞬間、二人同時に『ひっ』っと息を呑む。
「ほらこの写真ね、本当は、こんなに沢山、写っているんだよ?」
「な、なんで……?」
私は、それ以上、言葉にすることが出来なかった。
雅美が掲げた写真は、ここに在るはずのない、先生に預けたはずの『あの写真』だった。